シスター寺田講話会報告
JASHスタディグループ講話会の報告
「ケニア・ウガンダの経験を分かち合う」 講師:シスター寺田和子(宮代会9回生)
10 月23日、午前のスタディグループミーティング終了後、昼食をはさんで第1グループの企画による講話会が開かれました。当日は台風が近づき時折強い雨が降 る一日でしたが、ウェブサイトでお申し込みのJASH会員はじめ、殆どのスタディメンバーが参加し、シスター寺田の貴重なご体験をうかがいました。
シスター寺田は1959年に聖心女子大学を卒業されました。
1980年に東アフリカの聖心会ウガンダ・ケニア管区に派遣され、ケニアでは1980年から2005年まで、ウガンダでは2006年から2010年まで小 教区や公立の学校で子供たちの教育に情熱を傾けてこられました。この日は、30年にわたる東アフリカでのご体験を沢山のスライドで紹介して下さいました。
―スライド写真を見ながら―
最初に赴任したケニアは1895年に英国の植民地となったが、多くの困難を経て1963年に独立し、共和国になった。40以上の部族からなり、 スワヒリ語が国語で英語が公用語となっている。教育は英語で行われている。現在キリスト教徒は全人口の半数以上を占め、原始宗教やイスラム教を信じる者も 多い。首都ナイロビは近代都市だが、町から離れると農業地帯やサバンナが拡がっている。野生動物が暮らす国立公園には世界中から観光客が訪れ、この国の重 要な産業になっている。小学校(8年)は無償だが、貧しい家庭の子供たちは学校に来ることが難しい。三光町の初等科生の「ハイチデ―」寄付で、貧しい村の 学校を援助することができた。
隣国のウガンダは「アフリカの真珠」と呼ばれる豊かな大地を持った美しい国である。英国の保護国となり、1962年に独立した。アミン大統領の 残虐行為で世界を震撼させたこの国は、現在ムセベニ大統領のもとで平和になり発展したが、国の一部で反政府勢力が動いている。聖心会は1962年に創立さ れ、中高や師範学校などで教育に携わってきた。2003年に聖心関係者や善意の方々の援助により、聖心小学校が開設された。ご協力を頂いたJASHの方々 に心から感謝する。100人足らずで始めた学校は500人に成長した。数人しかいなかったウガンダ人のシスターも現在は50人を超え活動している。
首都カンパラのある南の地区は豊かであるが、北東にあるカラモジャは半砂漠地帯にあり発展も遅れた。一般に貧しい人たちが多い。主に働くのは女性で男性は あまり働かない。90年前にイタリアの宣教会が来て福音が伝えられ、学校教育が始められた。深刻な食糧事情のため世界食糧機構に頼るが、一日一食またはそ れ以下の生活で栄養失調の子供が多い。NPOは援助のためにやってくるが継続性の無いものが多く、必要な所に援助が届くか疑問である。
アフリカの国々では子供たちの3人に1人が栄養失調と言われている。一方日本では食料需要の70%を輸入し、その3分の1が日常生活の中で捨て られている。私達が現地に行って一人一人に食料を配ることはできないが、その人達のことを考えて心を向けて祈ることはできる。「もったいない」という気持 ちを持って物を大切にし、小さなことから地球共同体の一員として痛みを感じていきたい。聖フィリピン・ドゥシェ-ンは「祈る人」であったが、それを見習っ て祈ることを心掛けてほしい。耳を傾ければ、その人が何を求めているかがわかる。
アフリカは元来豊かな文化を持つ大陸だったが、植民地保有国がその土地を奪い貧困を生んだ。たびたび紛争が起き、それが内戦となるが、第一世界の国々が自国の利益のために関与し、アフリカの国々が犠牲になっていることがあるので、その責任は大きい。
世界はひとつの共同体、ひとつの体、どの部分も必要でその一部が病めば体全体が病んでしまうということを意識してほしい。誰かが苦しんでいるのを自分の苦しみとしてとらえることのできる人間性豊かな人でいてほしい。
―質問―
Q)聖心に通う子たちの家庭環境は?
A)聖心は私立なので授業料を払える家庭の子供達が通っているが、エイズ孤児や貧しい家庭の子供達には奨学金を与え入学できるようにしている。
Q)この30年間で東アフリカはどう変わった?
A)ケニアの場合は物質文明が押し寄せ、高層建築も建てられ見かけは豊かになったが、以前より貧しい人が多くなった。30年前と比べると国民意識が高まり 環境問題を初め、国の現在や将来に関して自由に発言するようになった。アフリカの大地がその豊かさを取り戻し、子供たちの目から輝く光が消えないようにと 願う。
―最後に―
スライドに映し出されたのは栄養失調でお腹の出た子供たち、やせ細り骨と皮だけになっている家畜、そして活き活きと目を輝かせて学校行事に参加 する生徒たち等々。恵み豊かであった筈のこの土地に飢餓と貧困が持ち込まれ今もそこから解放されずにいる現状、教育に託された希望など、沢山の写真を通し てシスターは様々な問題を提起して下さいました。
委員長 山岡靖子 記