シスターからのメッセージ⑭ シスター新庄美重子

2021-11-01

1.名前: 新庄 美重子シスター新庄(文中)

2.プロフィール:

  学校関係:不二聖心女子学院教諭、聖心女子大学非常勤講師、
聖心女子学院校長、学校法人聖心女子学院理事長
聖心会: 管区会計 管区長  総会計(ローマ本部)
現在は札幌聖心女子学院非常勤講師、修道院長

3.座右の銘

「マリアはこれらの出来事をすべて心に納め思い巡らしていた。」(ルカ 2:19)

「母はこれらの出来事をすべて心に納めていた」(ルカ 2:51)

座右の銘というより、10月には「感ずべき御母」(Mater Admirabilis)の祝日があり、この聖書の言葉を想いだすので選びました。聖書では、馬屋で生まれた幼子を見に羊飼いたちが拝みに来るという不思議な光景を、マリアは「心に納め思い巡らしていた」(ルカ 2:19)と述べています。また、少年イエスが神殿で学者たちと話をしていて両親を心配させるという不可解な出来事の後にも、「マリアはこれらの出来事をすべて心に納め思い巡らしていた」(ルカ 2:51)とあります。マリアはすぐには理解できない出来事をも静かに受け止め、そこに神のこころを感じようとしたのだと思います。

卒業生の皆様はどこの聖心の姉妹校にもある「感ずべき御母」の絵を思い出されるでしょう。若いマリアが静かに祈りのうちに「思い巡らして」いる姿です。私たちが在校中、この絵を通して学んだことは、心を静め、出来事の中に、目に見えないもの、物の奥にあるものを見ること、そして、自分の心の奥にささやかれる神の声を聴き、神のこころを感じとることだったと思います。

私たちの人生にはすぐに理解できない、またはいつになっても理解できないことがなんと多いことでしょう。「こんなことを神様はお許しになっているのだろうか」とさえ思うこともあります。今、世界中が体験しているこのパンデミックの中にも、神様が働いておられることを信じ、希望を持ち続け、前に進むためにもマリアのこの姿に倣いたいと思います。

4.メッセージ

これも、メッセージというより、ご一緒に考えたいと思っていることを分かち合います。
私は、昨年の4月から札幌に移り、久しぶりに中高生とかかわることになりました。若い力から学ぶことが大いにあります。コロナ禍で学校では行事や学習活動の機会が今までとは違う形をとることを強いられています。彼女たちは生まれたときから日々進展していくテクノロジーの世界に浸っているわけですから、私たちの思いつかないこと、また到底持ちえない術を持っているのです。ですから、想像力を働かせ、創造力を使って、そして技術も使って、制限のある中で何かを作り上げていこうと工夫します。彼女たちのはちきれるような発想から繰り広げられるものに圧倒されます。ここに希望のしるしがあります。テクノロジーについていくのにアップアップしている年代の私たちであってもコロナ禍にあえぐ今の時、特に苦しい立場にある方々に思いを寄せ、想像力と創造力を生かして、自分に出来ることに努めていきたいものです。

もう一つ若い力から学んでいます。国連の掲げるSDGs(Sustainable Development Goals持続可能な開発目標)については、姉妹校の生徒たちはずいぶん前から熱心に学び、実行に励んでいます。彼女たちが実行しようとする具体的なアクションにも想像力と創造力が発揮され日常生活でできることから始めようというエネルギーを感じます。ここにも希望のしるしがあります。

SDGsは世の中一般では、少なくとも言葉だけは普及しています。でも、その基本理念の「誰一人取り残さない」ということが本当に理解されているかはわかりません。分断がますます深くなっていく世界の現実をみれば、その実現はまだまだ遠いように思わざるを得ません。しかし、実は、「どんな人も大切にされる—inclusiveな世界をめざす」ことは私たち一人ひとりにかかっているということを自覚することが大切だと思います。福音書を読めば、イエス・キリストがまさにどんな人をも受け入れ、寄り添って本当の”inclusive”な生きかたをされたことがわかります。すべての人が自分の場所を持つ社会、世界を作りたいと思えば、一人ひとりがこのイエスのみこころに倣って生きることではないでしょうか。普段の生活の中でもしばしば、自分と違うもの、考えに出会った時のとっさの反応が「排除」したくなる自分の心の傾きに気づきます。異質のものを取り除きたいという反応からどんなものも受け入れるという動きに自分を変えていくのは神様の恵みに頼るほかないでしょう。「感ずべき御母」の内省する姿を思い起こしながら、日々、出来事の中に働かれる神の力を信じ、恵みを願いながら進みたいものです。