With Dirt Under Her Fingernails 日本語訳「汚れた爪で」
With Dirt Under Her Fingernails
日本語訳「汚れた爪で」
サントゥ・マリー・ドンオ―の修道院再開を目指したフィリピンの試みは、当時の裕福な若い女性の持っていた力量を遥かに超えたものを必要としていたと思われます。彼女は日頃から職人や商人の仕事ぶりを観察していたのでしょうか、或は実践の場での自分なりの工夫で、方法を見出したのでしょうか。ソフィにポスト通りの家の準備を託された時、フィリピンは床をこすって掃除しただけでなく、窓枠の取り換えから、職人の仕事が遅い時はモルタル塗りの作業まで手伝ったと言われています。
アメリカの開拓地に暮らして数年後には、フィリピンは家具の修理をし、庭仕事、乳搾り、家畜小屋の掃除などすべてをこなすようになっていました。学校で「手が掛かる」とされた子供たちが庭に出されると彼らを迎えたのは、つぎはぎだらけのハビットを着た、あの泥で爪が真っ黒な老齢の修道女、フィリピンだったのです。彼女は、敬虔な様子でヒナギクを何本か切り取っているのではなく、食卓に載せるための野菜を栽培する労働に従事していました。
設立が始まったころのアメリカでは、これらの日常の作業は生き残るために必要不可欠で、フィリピンにとって何一つ不足はありませんでした。彼女はどのような新しい事態も受けて立ち、寛大に、ユーモアと気働き、デュシェーン家持ち前の強い意志を持って課題や困難に立ち向かいました。誤りや失敗があったとしても、フィリピンは新たな挑戦を恐れませんでした。そして、共に働く実践力や能力の劣るものや、自分の手を汚す覚悟のないものに忍耐心を試される場面もあったのではないでしょうか。
私たちには、泥で黒くなるほどの爪の汚れを厭わずに、フィリピンと肩を並べて働く覚悟があるでしょうか。
文・画:ドナ・コリンズRSCJ アメリカ・カナダ管区
訳:中山洋子